祝 辞
経済産業省通商政策局長 松尾 剛彦
 中東協力センターが創立50周年を迎えられましたことを心よりお祝い申し上げます。また、これまで中東諸国と幅広い分野で事業に取り組まれ、日本との関係強化に貢献して頂いていることにつき感謝致します。

 我が国は原油の9割、天然ガスの1割を中東地域から輸入しています。我が国のエネルギー安全保障上、中東産油国等との関係を強化拡大していくことは極めて重要な課題です。

 中東産油国は、中長期的に脱炭素により石油ガス収入が減少していくことを見据え、石油依存脱却と産業多角化を志向しています。このためサウジアラビアやUAE などは、包括的発展を実現するための成長戦略として将来ビジョンを策定し、産業構造転換、投資促進、グリーン成長、 FTA 推進、女性の社会進出といった社会経済の改革を進めています。湾岸国に限らず、トルコ等でも同様の改革に取り組んでいます。

 こうした状況から、中東諸国は我が国の産業育成の経験や、製造業の技術力への強い期待を持っており、日本企業からの投資促進や、人材育成、技術やノウハウの移転を強く希求しています。我が国としては、中東諸国のニーズを捉え、双方向の投資促進や産業人材の育成により、天然資源分野に限らない重層的な関係を構築することが重要です。

 中東協力センターは、1973 年の設立以来、半世紀という長い年月をかけて、延べ 527 件に及ぶ投資促進ミッションの派遣、研修受入れや企業化可能性調査等を通じた日本企業による中東諸国への投資支援、リーダー育成研修や電力・水等のインフラ研修をはじめとした中東諸国の産業発展等に資する延べ 380 件の人材育成支援や人的ネットワーク強化に貢献してこられました。加えて、日本・サウジ・ビジネスカウンシルや日本・アブダビ経済協議会(ADJEC)等の定期会議を通じた二国間関係の強化、中東諸国での水資源関連ビジネス形成に資する情報提供や意見交換を行う中東水資源協力推進会議を通じた質の高いインフラ整備への貢献、今年で 46 回目を数える中東協力現地会議や各専門テーマのフォーラム開催により、官民の専門的知見の習得及び情報共有の促進を進めてこられました。こうした 50 年の長きに渡るセンターのご尽力に心からお礼申し上げます。

 中東諸国はこれまでも、これからも、我が国にとって重要なパートナーです。これまで以上に幅広い分野での協力促進が必要です。中東協力センターがこれまでに築き、発展させてきた中東諸国との関係を活かしつつ、今後とも日本企業と中東の官民の結節点としてご活躍頂くことを期待しまして、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。
経済産業省資源エネルギー庁長官 村瀬 佳史
 この度、一般財団法人中東協力センターが創立50周年を迎えられたことに対しまして、心からお喜びを申し上げます。また、中東地域との経済技術協力関係の強化に向けた同センターのこれまでの取り組みに対しまして厚く敬意を表する次第でございます。

 また、1973年の第1次オイルショックと時期を同じくして創設された、我が資源エネルギー庁も同様に50周年を迎え、これまで国民生活や経済の基盤となる安定的で安価なエネルギー供給の確保に務めて参りましたが、その歴史は中東とともに歩んだ50年と言っても過言ではないと思います。

 これまで長年にわたって中東地域は、我が国の石油・ガスの重要な供給源と位置付けられており、現在、我が国は原油輸入の約9割、天然ガス輸入の約1割を中東に依存しております。中東地域はそのエネルギー資源の存在、さらに世界政治情勢に与える影響、経済的ポテンシャルなどからみて、極めて重要性の高い地域であります。

 その中東地域において、我が国としては、重層的な関係の構築を促進するため、中東地域の政治的、経済的安定の実現に向けた貢献、さらにエネルギーの安定供給の確保等の施策を総合的に進めて参りました。その施策の推進にあたり、中東協力センターは、貿易・投資分野を含めた幅広い協力関係の強化を目指し、中東諸国の経済多角化を支援し、地域の安定、さらにエネルギー安定供給の確保に向けた支援に協力頂いてきております。

 一方で、気候変動に関する国際的な枠組みを背景に、脱炭素への動きは世界的な潮流となり、世界中でエネルギーをはじめ様々な分野で大きな変化が起きています。世界がカーボンニュートラルと脱炭素社会を目指す中、中東諸国においてもこれまで以上に石油依存からの脱却を進め、クリーンエネルギーの活用に取り組む動きが顕著に見られます。

 中東地域を含め世界全体でカーボンニュートラルを実現するためには、各国の異なる事情を踏まえ、CO2の排出削減のみならず、CO2を原材料として化学品の製造などを行うカーボンリサイクル、徹底した省エネ、再エネ、原子力、水素・アンモニア、CCUSなど多様な道筋を追求することが重要だと考えています。

 我が国にとって中東地域、特に湾岸産油国は重要な化石燃料供給基地であり、エネルギー安全保障の下、緊密で友好的な関係を維持してきました。また、中東地域は天然ガスの世界の埋蔵量の5分の1を保有し、将来的には水素やアンモニアといった脱炭素燃料の供給地となる可能性を秘めております。水素は世界的なエネルギー転換を可能にするクリーン燃料として、また、アンモニアは水素を運ぶキャリアー、さらに直接の燃料としても注目されています。他方、我が国は、こうした化石燃料からの水素製造や水素の運搬、さらに製造の過程で発生する二酸化炭素の分離・貯蔵において優れた技術を有しており、これらを活用することにより、中東との連携を図ることが可能と考えております。

 本年7月、岸田総理は湾岸諸国の一つであるサウジアラビアを訪問し、中東の地理的優位性や低廉な再エネ資源、国内や周辺地域の鉱物資源、豊富な投資余力と、日本の最先端の脱炭素技術という双方の「強み」を組み合わせ、中東地域を次世代燃料や鉱物資源のサプライチェーン上のグローバルなハブにするとの「グローバル・グリーン・エネルギー・ハブ」構想を提案しました。これに対し、サウジアラビアからは、両国でこの構想を具体的なプロジェクトにして進めていくことが提案され、両国間で水素・アンモニアの製造・活用、カーボンリサイクルといった関連分野で連携していくことを表明しました。今後、こうした取り組みが幅広く中東地域に展開されていくことで更なる関係強化に繋がっていくと考えています。

 中東地域はこれまで、さらにこれからも引き続き我が国にとって重要な地域であるだけでなく、ともに歩んでいくかけがえのないパートナーであり、この中東地域との一層の協力促進を望んでやみません。我が国と中東地域の協力関係を取り持つ架け橋となる中東協力センターの活動に引き続き期待したいと思います。
外務省中東アフリカ局長 長岡 寛介
 このたびは、貴センターが創設50周年を迎えられたことを、心よりお祝い申し上げます。

 貴センターが創設された1973年は第一次石油危機の年でした。第四次中東戦争を契機とするアラブ諸国の石油戦略の展開は、石油の供給制限および価格の急騰となって国際政治経済の各方面に大きな影響を与えました。それから50年を経た現在、ロシアによるウクライナ侵略等を受けて、世界は再びエネルギー安全保障上の課題に直面しています。また、今般のハマス等によるイスラエルへの攻撃により、中東地域の更なる不安定化が懸念されます。そのような中、世界最大のエネルギー産出地域であり、潜在性のあふれる市場でもある中東地域との信頼関係の構築や関係者間の対話の促進は、より一層重要になっております。

 貴センターは創設以来、中東・北アフリカ各国における人材育成支援事業、ビジネスフォーラムの開催を通じた日本企業と中東・北アフリカ各国企業とのマッチング、セミナーやシンポジウムの開催を通じた日本企業への情報提供等を行ってこられました。こうした取組は、日本が産油国との間で実務的な協力を進める上で、非常に重要な役割を担ってきました。貴センターが長年、日本と中東各国との信頼関係の背景にある、人と人とのつながりの基礎を築いてこられたことを高く評価しております。

 また、近年、湾岸産油・産ガス国は、石油・ガス依存からの脱却や産業多角化などを重要課題として社会経済改革に取り組んでいますが、貴センターは、日・サウジ・ビジョン2030ビジネスフォーラムの共催や日本・アブダビ経済協議会(ADJEC)の開催などの投資促進事業等を通じて、同地域における脱炭素や産業多角化に向けた協力案件を実施してこられました。政府としては、こうした改革への協力、支援をこれからも積極的に行っていく所存であり、貴センターにも引き続きのご協力を期待しております。

 また、先般、岸田総理はサウジアラビア王国、アラブ首長国連邦、カタール国を訪問した際に、中東地域をクリーンエネルギーや重要鉱物のグローバルな供給ハブとする「グローバル・グリーン・エネルギー・ハブ」構想を提案しました。従来の「産油・産ガス国」と「消費国」という関係を、再生可能エネルギー、宇宙、医療、農業、学術交流、エンターテイメント、文化・スポーツ等を含む幅広い分野へと拡大することで、新たなパートナーシップの形成に向けて取り組んでいく考えです。この訪問に多数の民間企業や貴センターを含む関係機関の代表に参加いただいたことで、具体的な協力案件が一つでも多く誕生することを期待しております。

 創設以来50年間、中東・北アフリカ諸国における産業経済の開発、貿易・投資の振興に対する日本の協力の推進に寄与されてきた貴センターに改めて感謝するとともに、今後の50年間も変わらぬ御支援を賜りたく、お願い申し上げます。

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